人を動かすときの心得

其の八 相手を変えるには自分が変わる

時々、自分の権利ばかりを主張して、自分の義務や責任については全く無頓着な方がいます。そういう方は、自分のことは棚にあげ、他人を非難ばかりして人の気持ちを思いやることができません。
福祉の担い手は、こうゆう方を前にして、粛々(しゅくしゅく)と仕事だけを進めていてはいけません。
一言、あるいは一動作を捉(とら)えて、世の中に感謝する気持ちを芽生えさせなくてはなりません。他人様に対して命令口調に聞こえるかもしれませんが、人間は万物に生かされ、かつ自分一人では存在できないわけですから、感謝の気持ちを忘れてはいけないのです。
ただ、力ずくで他人の心を変えることはできません。自分が変わるしか、他に方法はありません。仏教に諸法(しょほう)実相(じっそう)という言葉があります。今ある自分は、全ての集大成の結果であると言うのですから、例えば、ヘルパーとして訪問した先も、何らかの縁と考えられます。であると、目の前で文句ばかり言っている利用者がいたとしても、自分の姿と受けとることが正しいのです。目の前の方の態度が自分の姿ならば、まさか自分の過去も同じだったのではないかと反省できるでしょう。このように、自分が反省をして心を変えたときに、その気持ちが相手に伝わるのです。
他人を恨み、社会をののしり、心が荒んだまま生きる人生ほど味気ないものはありません。人生には限りがあるのだから、残る人生はぜひともおだやかに過ごしてもらいたいものです。

其の九 敬意をはらう

どの人にも必ずご両親がいて、その他たくさんの人々の思いの結果として、今、存在しているのです。そのことを思えば、人をぞんざいに扱うことなどで、決してできないはずです。

其の十 やる気をおこさせる

やる気を起こさせるには、その人が、どれほど重要な立場にあるかを教えることです。
組織の重要なポジションにいるならば、その人の判断でどのような結果になるかを自覚させます。
たとえば、利用者や家族にとって何でも相談できるような職員は、どれほど、その家族にとって支えになっているかを解らせます。